【みうらじゅんの収集癖と発表癖】どん!ドン!丼! スケール大 命名も大盛り?!

最強の丼はどれだ… 最強の丼はどれだ…

 たまにテレビの収録でロケバスに乗ることがある。

 僕の場合、主に仏像を見て回る旅なのだけど、一番楽しみにしてるのは昼食。ディレクターが前もってコピーしたメニュー表を配る時、その都度“ペコキュリー”(ペコ100%をペコペコ状態とする)に照らして「今、ペコ75だからオレは肉うどんにしとくかな」などと聞かれもしない腹具合を主張してはお願いする。

 カメラマンや音声さんといった技術班は大概、丼。日本全国の丼を知り尽くしてるかと思いきや「この、衣笠丼って何だよ?」ってこともある。

 僕は京都出身なので「それは甘辛く炊いた油揚げと青ねぎを卵で綴(と)じ、ご飯にのせた丼ですよ」と、得意気(とくいげ)に説明をするのだが誰も「それにしよう」って言葉は返ってこない。要するに疲れ切った体にはパンチがなさ過ぎて結局、オーソドックスなカツ丼や天丼に落ち着くのである。

 僕は一時期、どの“丼”が最強なのか?と、自らは食べないくせにそのことばかり考えていた。

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 東京・上野駅近くの店先に『西郷丼』なる看板を発見したのは30年ほど前。誰もが一度は思いつく駄ジャレを本気でメニューにして出す飲食店主の勇気は買うが、内容は単なるマグロ丼であったことに“WHY?”。

 西郷どんという人物のスケールのデカさにあやかりたかったのであろうが、今は都市開発で店ごと無くなってしまった。

 また、福井県立恐竜博物館の食堂で見かけたスケールのデカイ丼『プテラノ丼』。見た目はキジ丼であるが、そのキャッチコピーに“翼竜をイメージした”と書かれてあってWHY? 実際、博物館でプテラノドンの骨の展示は見たけど、アイツは到底、こんな丼に収まるサイズじゃないでしょ!

 小樽に行った時、“流石(さすが)、北海道はデカイなぁ”と驚いたのが『ポセイ丼』。だって海洋の全てを支配するギリシャ神話の神の名を借りて単なる海鮮丼なわけが…。いや、盛りの大きい海鮮丼みたいだった。

 函館の五稜郭近くの店の看板には『ゴッホ丼』。ひまわりの種でも入ってるというのか? 他のメニューもどうかしてるが、『ゴーギャン』に至っては丼なのか麺なのか、そこも分からない。どんな品が出てくるのかとても興味深いけど、たぶん技術班の連中はこんな際物(きわもの)メニューに迷うことなく、カツ丼や天丼をオーダーするに決まってるだろう。(作家、イラストレーター・みうらじゅん)

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